雲の海と空飛ぶ人
雲海という自然現象がある。
天気予報などからその発生を予想することはできるけれど、それでも確実な保証はなく見ることができるかどうかは現地に行ってみないと分からない。
しかも発生するのは日の出時刻の前後1時間程度なので、いざ発生してから家を出たのでは間に合わないという、どちらかと言うと撮影そのものよりも撮影に至るまでがなかなか大変な被写体。
先日、お誘いをいただき条件の良さそうな日を狙ってそんな雲海の撮影に出掛けてきた。多分1人では布団から出られずにさっさと残念していたと思う。
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早朝と言うより深夜に出発し、日の出の2時間ほど前に目的地へ到着。辺鄙な田舎の山の上だというのにすでに結構な数のクルマが停まっていた。好条件でしかも週末となると皆考えることは同じらしい。
肝心の雲海はというと、到着直後の様子ではまだ微妙な様子。うっすらと霧が確認できる程度で街並みが見えている状態。しばらく待機しつつ経過を見守る。
夜明け前、徐々に霧が濃くなっていく。これはいい感じかもしれない。期待が膨らむ。
そうこうするうち日の出直前には見事な雲海が出現し、私達と同じように写真を撮りに来た人や家族連れにカップルなどなど、さらに人が増えて結構な人数に。たまにはこういう賑やかな撮影もなんだかいい。
「普通の風景写真はもういいかなぁ…」などと考えているくせに、眼前に広がる美しい景色に心が昂ぶって夢中でシャッターを切ってしまうあたり、本当のところはまだ「もういい」というわけではないのかもしれない。
しかも幸運なことに、今回は雲海の上を飛ぶパラグライダーというおまけ付だった。この場所自体は何度か来たことがあったけれどこれは初めて。
空の上から1人でこの絶景を眺める気分は一体どんなものだろうか。自分で飛んでみたいとは思えないけれど、だからこそ羨ましく感じる。
この日、大勢の人が同じ場所から同じタイミングで撮影をしたので、画角の違いはあれど同じような写真が相当な枚数量産されたと思う。そういう意味ではやや面白みに欠けるかもしれないけれど、それでもこの美しい景色を自分の目で見て、そして画になる写真が撮れたので大いに満足。いつか子供にもこの風景を見せてあげたい。